ジンと焼酎の違いって?泡盛やウォッカとの共通点もご紹介
ジンと焼酎の違いはどこにあるのでしょうか。
どちらも色は透明で一見すると同じお酒に見えますが、実は原料、製法、アルコール度数など様々な違いがあります。
当記事ではジンと焼酎の違いを分かりやすく解説していきます。
またウォッカや泡盛など他の蒸留酒との共通点なども触れていきいます。
主な生産地の違い
焼酎は主産地は日本で、都道府県によって様々な特色がある焼酎が作られています。
一方のジンはオランダやドイツでも作られていますが、世界的に有名なのはイギリスのロンドンで作られる「ドライジン」です。
味わいの違い
ジンは精製後に熟成させないためクリアな味わいで、ジュニパーベリー(ねずの実)などのボタニカルで風味付けがされているので、柑橘系に近い風味があります。
焼酎の乙類は貯蔵して熟成させることが多いのでまろやかな味わいが特徴で、風味は原料によって異なります。
甲類に関してはジンと同様クリアな味わいとなっています。
原料の違い
ジンの原料は主に「トウモロコシ、ライ麦、大麦などの穀物」です。原料だけでいえばウォッカと同じです。(ウォッカはよくジャガイモも使われます)
これらの原料を蒸留し、その後ジュニパーベリーなどのボタニカル(ハーブ・スパイス、果皮など)を加えてさらに蒸留します。
ジンはこのボタニカルに何を使うかで風味が大きく変わります。
ジンといえばジュニパーベリーがもたらす柑橘系とても香りが良いのが特徴で、そのままでも美味しくいただけます。
一方の焼酎の原料は、主に「米、麦、芋、蕎麦、栗など」です。
米で作れば米焼酎、芋なら芋焼酎、と原料によって違った風味が楽しめます。
焼酎は様々な原料を使っており、変わり種では、黒糖、牛乳、銀杏、シソ、トマト、緑茶なんかもあります。
製法の違い
ジンと焼酎の製法の違いには、「連続式蒸留」「単式蒸留」がポイントとなります。
「連続式蒸留」
十数本の蒸留塔で蒸留を何度も繰り返すことで純度が高いクリアなスピリッツを作成する。完成後のアルコール度数は約96%
「単式蒸留」
蒸留は1回のため蒸留後の液体のアルコール度数も高くならない分、素材の風味が生きる。
ジンの製造方法
ジンの製法ではトウモロコシ、ライ麦、大麦などの穀物に「麦芽」「酵母」を加え糖化・発酵させたものを、連続式蒸留器で高いアルコール度数(約96%)のニュートラルなグレーン・スピリッツをまず作り出します。
この時点ではジン特有の風味はなく、ウォッカと同じように無味無臭のアルコールです。
ここに加水を行いアルコール度数を約40%~60%に調整したうえ、ねずの実(ジュニパー・ベリー)の他、5~10種類ボタニカル(草根木皮)を加えて、さらにポットスチル(単式蒸溜器)で再蒸留を行っていきます。
ボタニカルに選ばれるのはジュニパーベリーのほか、キャラウェイ、フェンネル、カーダモン、レモンやオレンジなどの果皮、シナモンの樹皮などさまざま。
これらの組み合わせ方が銘柄の生命線で、公表されないのが通常です。
再蒸溜には主に2通りの方法があります。
ひとつはグレーンスピリッツに直接ボタニカルを数時間~1日浸してポットスチルで蒸溜する方法。
ビーフィーター・ジンは24時間浸してから蒸留します。
もうひとつはポットスチル内部の上部にボタニカルを詰めて、蒸溜によって立ちのぼるスピリッツの蒸気で香味成分を抽出する方法。ヴェイパー・インフュージョンと呼ばれ、ボンベイ・サファイアはこの製法で作られています。
この単式蒸留器でもう一度蒸留させることで、アルコール度数70~80%のジンの原液が出来上がります。
仕上げに加水を行うことでアルコール度数40~47%のジンに仕上がります。
最後の加水でジンの味が仕上がるため、製造者によってこだわりの水を使うことも多いです。
焼酎の製造方法
乙類焼酎
焼酎の製法はまず米・麦・芋などの原料に「麹」を加えて「でんぷん」を糖化させます。(泡盛では「黒麹」が使われます。)
その後、酵母を加えて発酵させ「一次もろみ」と呼ばれるお酒の元を作り出します。
さらに別で米・麦・芋を蒸したものを「一次もろみ」に加え、「二次もろみ」という焼酎の元を作ります。
この二次もろみを単式蒸留でろ過することで焼酎の原酒が出来上がります。
出来上がったばかりの焼酎はガス成分が含まれていて尖った味わいのため、しばらく熟成させることで焼酎が完成します。
これが「乙類焼酎」と呼ばれるもので、古来から行われてる単式蒸留のため、原料の風味が良く残ります。
甲類焼酎
穀物やさとうきびを原料にして、まずは上記と同様にもろみを作り出します。
ここで単式蒸留ではなく、連続式蒸留でろ過することで原料用アルコール(度数約96%)を作り出します。
ここまではジンの第一段階とよく似ています。
ここに加水をして度数を調整すれば「甲類焼酎」の完成です。
ろ過を繰り返したことで、純度の高いクリアな味の焼酎が出来上がります。
混和焼酎
乙類焼酎、甲類焼酎をを混ぜた「混和焼酎」も存在します。
両方をブレンドすることで、クリアさと風味のバランスが取れた焼酎になります。
熟成方法の違い
ジンは出来上がったらすぐに瓶詰されるため、一般的に熟成は行われません。
甲類焼酎も同様です。
一方、乙類焼酎は味をまろやかにするため、「タンク、甕、樽など」で数か月以上熟成させてから瓶詰されることが多いです。
アルコール度数の違い
ジンはアルコール度数が高く、40~47%ほどあります。
一方の焼酎はアルコール度数が20%~25%ほどのものが多いです。
飲み方の違い
ジンはストレートやロックでも飲まれますし、カクテルにも使用されます。
ジンのカクテルで言えばジントニック、ジンフィズ、マティーニなど様々な種類が存在します。
そのため、バーではジンは欠かすことができないお酒といえます。
焼酎は、本格的な乙類焼酎はロックや水割りでそのまま風味を楽しむ飲み方が一般的です。
甲類焼酎は、チューハイ、ウーロンハイ、レモンハイといった何かで割って飲むことが多いです。
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歴史の違い
ジンに欠かせないジュニパーベリーの解熱・利尿作用は古くから知られており、11世紀頃にはイタリアの修道士がジュニパーベリーを使って酒を作っていた記録があり、これがジンの発祥とされています。
17世紀中頃のオランダでジュニパーベリーを使った薬用種が作られ、これが美味ということで一般に広がっていきました。
17世紀末には、この薬用種がイギリスに持ち込まれ人気を博すようになります。
さらに19世紀半ばに連続式蒸留器が発明されると、ドライジンは世界中に流通するようになります。
焼酎については、焼酎は14世紀にシャム国(現在のタイ)から、中国、琉球を経由して日本に渡って来ました。
日本では、16世紀頃から焼酎が作られていたと言われていますが、製法は全て単式蒸留にて行われていました。
19世紀末(明治28年頃)に連続蒸留器が輸入されたことで、甲類焼酎が作れるようになり、焼酎は日本中に広がっていきました。
ジンと焼酎の共通点
ジンと焼酎の共通点といえば、同じ蒸留酒であることが挙げられます。
また、ストレート、ロック、割りものなど、様々な飲まれ方をすることも共通点です。
さらにジンも焼酎も、歴史でいえばイギリスでの産業革命(1760年代~1830年代)に大きな影響を受けています。
というのも、産業革命期に「連続式蒸留器」が発明されなければ、ここまで広く愛されることはなかったかもしれないからです。
上記で紹介したとおり、ジンはオランダで生まれイギリスに渡った後、連続式蒸留器が発明されクリアでドライな味に洗練され、そのクリアな味がカクテル素材としてアメリカで大ヒットし、世界各国に広がり江戸から明治時代にかけて、日本にもジンがやってきました。
焼酎も連続式蒸留器が日本に入ってきたおかげで、甲類を大量生産することができるようになり、日本中に焼酎が広がっていきました。
ジンも焼酎も、イギリスでの革新的技術がなければここまで流通することがなかったと考えると、不思議な縁を感じます。
飲み方もクリアで割りやすい甲類焼酎はサワーなどで飲まれ、風味が残った乙類焼酎はロックやストレートで飲まれています。
同様にクリアなドライ・ジンはカクテルで愛用され、単式蒸留機で造ったコクのあるシュタインヘーガーなどはそのまま飲まれることが多いことも一緒です。
ジンと焼酎は歴史も材料も違えど、連続蒸留器の登場で革命が起きつつ、2種類それぞれが愛され続けているという部分では共通しているといえます。
まとめ
ジンと焼酎の違いをまとめると、以下の一覧表のようになります。
ジン | 焼酎 | |
---|---|---|
主産地 | イギリス(ロンドン) | 日本各地 |
味わい |
・クリアな味わい |
【甲類焼酎】クリアな味わい |
原料 | トウモロコシ、ライ麦、大麦など | 米、麦、芋、蕎麦、栗など |
風味付け | ジュニパーベリーのほか、キャラウェイ、フェンネル、カーダモン、レモンやオレンジなどの果皮、シナモンの樹皮などのボタニカル | 黒糖、牛乳、銀杏、シソ、トマト、緑茶など |
蒸留方法 |
【1回目】連続式蒸留 |
【甲類焼酎】連続式蒸留 |
熟成 | しない |
【甲類焼酎】しない |
アルコール |
40~47%程度 | 20~25%程度 |
飲み方 | ストレート、ロック、カクテル |
【甲類焼酎】 |
起源 | 11世紀頃イタリアで薬用種として | 14世紀頃シャム国から日本に渡ってきた |
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